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てのひらの太陽




大丈夫か?と聞いたのは誰だっただろう?
肩を叩いて、少し眠れとそう言った。
知っているやつだった気もするし、全然知らない奴だったきもする。


初めて人を殺めた夜


罪を背負った。
剣を抜き向かってくる相手から身を守るためには、こちらも剣を振うしかない。
だから仕方ないのだと言い聞かせようとしても無駄だ。
結局のところ命を奪う事で金を得る…傭兵とはそういう仕事なのだから。


自分で選んだ道だ


気分は良くない。
でも間違っているとは言い切れない。
いつか馴れてしまうのだろうか?
肉を割く感触や、生臭い血の匂いに…全身染まってしまうのだろうか?
ぎゅっと剣を胸に抱く。
いつかきっと…自分自身もコレに飲まれて沈むのだろう。


そこはかとなく暗く果てのない虚無の中に―――










「…り、ガウリイ!」


いい加減に起きろ!!と叫ぶ声。
びっくりして反射的に剣をいつも置いている場所に手を伸ばすが…それは馴染んだ得物を掴むことは無く、虚しくも空をかいた。
何がどうなっているのか理解できない。

ここはどこで、彼女は…

それは瞬間的な記憶の喪失。
あまりに鮮明すぎた夢が現実と過去をごちゃまぜにして脳がついていかなかった。
あぁ、そうかと理解した時、小さな温もりが指を掴んだ。
人差し指をぎゅーっと握るそれに目を向けると、ぱっと手を放して彼女の後ろへ隠れてしまう。


「まったく、ねぼすけなお父さんね。朝ごはんできてるから早く着替えて」


子供を抱き上げてリナは部屋を出てしまった。
ぼんやりとその姿を眺める。
彼女の肩越しの青い瞳はにこりと笑うと小さな手を振った。
はやくはやくと。

パタンと扉が閉じて、部屋が静かになる。
しかし耳を澄ませば階下から彼女の声が聞こえた。

あの頃、想像もしなかった幸せがここにあった。
自分が手にしていいのか悩んだ時もある。
彼女に子供が宿った時、あまりに幸せで、幸せすぎて怖かった。
家族を持つこと、父になることが。


自分が幸せになっても良いのだろうか…?


ふとよぎったその疑問を、リナは笑った。


『じゃぁ、あんたは生まれてくる子を不幸にするの?』


幸せが怖くて逃げる?
過去を悔いてどこに行くの?
現実は今ここにあるのに、幸せだと許されないの?


『過去の過ちを悔いるのは勝手だけど、その償いのしわ寄せを関係のない子供に押しつけるのは止めて。あたしは何からも逃げないわ』


まっすぐな瞳が、弱い自分を射抜いたのは最早何度目なのかわからなかった。
全てを許されたいなんて思わない。
しかし、生きてきた道を後悔することは無い。
その道が無ければ彼女と出会えなかったのだから…





くすりと笑うと、ベッドから起き上がる。
窓から差し込む朝日が眩しかった。

たいようはいつもこの腕の中



END


原稿中でなかなか更新作業が出来ない…orz
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