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つづかない。
【神殺し】
「神を殺めた罪により、そのものに死刑を言い渡す」
カンカンと見た目より甲高い音で木槌が振り下された。
反論など許されるはずも無く、連れてこられた時と同じように裁判所から引きずり出され檻付きの荷馬車に押し込められる。
同様に判決の出た女たちが何人も無罪を訴えていたが、役人も集まった人々も耳を貸さない。
狂った世の中だ。リナは檻越しの空を見上げた。灰色の空。
今日食べる麦の一握りすら手にできない国民が半数を占めるというのに、貴族はそんなことお構いなく贅をむさぼり、権利を振りかざす。
夜毎どこかで開かれるパーティーのために税は上げられ、払えなければ死だ。
国民の不満はつのるばかり。
その矛先が自らに向かないように定期的に裁判が行われ”神殺し”の罪で無実のものを有罪にする。
猛獣の入った檻に入れ、公開処刑をするために。
悪趣味なガス抜きとでも言うのだろうか…しかし、無知な人々は己より酷い境遇に置かれたものをみると安心するのだ。
確かに不満はあるが、自分はあれよりマシだと…
「…神殺し…」
この世に本当に神がいると言うのなら、あたしが殺してやるとリナは思った。
誰も救わない神ならいなくていい。
間違いを正せない神ならばいらない。
馬車が動き出す。悲鳴が上がった。
いやだ、死にたくない。
少なくてもこんなところで、終わりたくない!
家族はいない。
自分が逃げて、罰を受ける知り合いもいない。
ならば道は一つ。
「…この世の終わりを」
消して使ってはいけない言葉。
闇を呼ぶ歌。
『あぁ、こんな魂は久しぶりだな―――』
周りの音が一瞬で消えたと思ったら、はるか頭上に人が浮かんでいるのが見えた。
瞬きした一瞬の間にそれは目の前に現れる。
『生きたいか?』
「死にたくは無いわ」
『助けてやろうか?』
驚くほど美しいそれの笑みの裏に欲望が見えた。
本能でリナは感じる。これは猛獣と同じだと。
人に似た姿をした獣。
しかし人と獣の境など、あるのだろうか?
少なくても目の前にるそれのほうがよほど綺麗なものに見えた。
「いいわ。助けてくれたら命を上げる」
『随分思い切りが良いな?』
「自分を殺す相手くらい選ぶ自由が欲しいわ」
『そうか…』
不敵に笑み舌なめずりをするそれが、剣を抜いた瞬間意識は途絶えた。
とかなんとか。つづかない。
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